日本も大きな流れに【ジョブ型雇用のはじまり】
長年企業に勤めていると、雇用形態、つまり社員としてはどういう形で雇われているのかということに疑問を持たないまま働き続けている実感です。
いわゆる日本型雇用というのは、最近でこそメンバーシップ型と言われるらしいですが、つまりは終身雇用制度のことですね。
終身雇用って何?状態
終身雇用は、ITなどの歴史がそれほど長くない企業ではそもそもあり得ない形態らしいですが、なんと明治か大正あたりから生まれた雇用の慣習とのことです。いかに優秀な職人を外部の企業に奪われないかということがきっかけで、一生を保証するから(契約なのかは疑問が残りますが)どうぞ長く残っていてくださいという制度になっています。
その前提としては、経済が右肩上がりに発展していることが条件なのですが、当然好景気もあれば不景気もあるので、上下変動する経済状況と共に企業はある程度ガマンしながらその制度を保ってきたわけです。その間、この終身雇用制度については皆、当たり前の雇用形態として日本では一般化していました。
1992年に初めて海外赴任を経験しました。私は特に雇用形態がどうのとかを全く気にしていたわけもなく、非常にフレンドリーな雰囲気の職場で、同僚と普通に世間話をして過ごしていたわけです。そして何か自分の知っている世界と様子が違うことに気がついたのです。
いくつかが重なってそれに気がついたのが3年目あたりなのですが、例えば
- 何年卒で入社したとか、同期が誰かなどという話題が社内に存在しない。4月とか9月とかに定期入社するという制度も無い。
- 人によって時期は違うが、憂鬱そうにしてたりソワソワしたりニヤけてたりしている時がある。
- 結構な頻度で同僚も上司も変わる。平均勤続年数4〜5年くらいでした。
- すごく若くして事業部長とか役員とかになる人も居る。そういう人が外部から急に来たりする
- 社員・マネージャー・経営者の区別がハッキリしていて、給与や待遇に相当な差がついている。
- すべての社員にミッションや専門性が明確で、キャリア形成などのためのジョブローテーションはほとんどない。
- 時として結構大きな部署ごと消滅したりするし、逆に急に3倍の規模になったりする。
- おおよその勤務時間帯というのが雰囲気で決まっているものの、出社退社の時間がみんなバラバラ。フレックス制度とかも無いし、時間で管理されてない(その代わり、社員食堂ランチは3回の総入れ替え制で、12,13,14時からなので、それに皆つられている)
ざっとこんな感じでした。
要はこれ、ジョブ型と呼ばれる雇用形態だからとのこと。
ジョブ型雇用
変化の激しい業界だったからこうなのかと思って聞いてみると、ほとんどの会社はこんなもんだと聞きました。
ほとんどの社員が野球選手のように1年契約になっているので、各人の契約更新の時には年俸アップのために渾身のアピールをするためにソワソワしているわけですね。基本は職種に値札がついているので、その職種を続けている限りは基本給の昇給は「ありません」。
また、その職種がよっぽど一般的なものでない限り、会社からのスペシャリストのニーズが急に無くなることもあり得るという、厳しい世界ですね。
その代わり皆個人事業主のような扱いを受け、給与の額を聞くと日本の同様の職種からすると5割から10割増しのような感じでした。
つまり、終身雇用のような長年にわたる補償というものが無い限り、実力がそのまま金額や待遇に繁栄する世界で、世界全体ではこの方式がほとんどなんだそうです。
終身雇用の終わりのはじまり
日本でも終身雇用の終了宣言をする会社も増えてきました。
新型コロナ対策の教訓から、日立では国内7割の23000人の社員を対象に基本在宅勤務をスタートするとのことです。週2〜3日の出社にして、ジョブ型雇用、つまり成果で評価する。2021年4月からスタートするということで、もう一年無いですね。コロナ騒動が無くてもこの制度に踏み切ったんじゃないかと想像しますけど、どうでしょうかね。
企業にとってそれぞれの社員の雇用を保障し続けることへのメリットが無くなってきたということでしょう。
それと、世界中の市場で競争していくためには、状況を見ながらすぐに転身できる器用さを持った集団でないとやっていけなくなったということですね。
長年にわたり企業に雇用されて作られてきた関係性が、日本の経済を支えてきたと言われてましたが、これからはそうも言ってられないことになりそうです。
次々と生み出される新技術で、企業で手に職を付けてきた人の活躍場所が急に無くなってしまうということも、十分起こり得るでしょう。
これまでの経験と、今の環境でやれる勉強を続けていくしかないんだなぁと思っています。